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なぜこれがここに?


「デ・キリコ展」で作品を見ながら、たっぷりと抱いたのが「なぜここにこれがあるの?」の違和感。

たとえば、

・部屋の中に剣闘士がいたり
・屋外に家具が置かれていたり

後者は地震がくると家具を家の外に出されているのを見た記憶が発端になっているそう。

さらに興味深いのが肖像画。

・静物画にワイプのように自分の肖像画が描かれている
・弟の肖像画に自分を象徴するケンタウルスの姿を描 く

といったように、「なぜここに?」の違和感があると同時に自己主張の強さを浴びるようでもあった。 

鑑賞しているときは「奇抜さがすごいな」で終わっていたけれど、身の回りにもそんな光景があることに気がついた。 

とある銭湯へ行くと、なぜか毎回水風呂の浴槽の縁に水を入れたケロリン桶が1〜2個置いてある。ほかの銭湯で、私は見たことのない光景。 

水がぬるくなっちゃうんじゃないかなと思って縁に使って空にした桶をふせておくと、その桶に別の人が水を入れて縁に置いている……。 

常連客に尋ねると「理由はわからないけど、いつもこうしてる。次の人への優しさなんじゃないかな」とのこと。 

私からすれば、見慣れない光景に「なぜこれがここに?」状態だったけど、2人にとっては不思議なものではなく当たり前のもの。 

こうやってちょっと変わったルールができていくのかもしれないなぁとぼんやりと考えていたのだけど、思い出されたのがデ・キリコの作品たち 

自分にとって当たり前のことを改めて問うことって難しい。あえて「なぜこれがここに?」と考えてみると、当たり前を考えるきっかけになるんだろうな。