アンゼルム・キーファー個展「Opus Magnum」
先日、映画『アンゼルム』を見たことで実際の作品も目にしてみたくなり、東京・青山にあるファーガス・マカフリー東京で開催中のアンゼルム・キーファーの個展「Opus Magnum」へ行ってきた。
ガラスケースの作品と水彩画で構成され、遠目から見ると透明感があり美しい。ガラスケースの中で宙を舞う作品たちは浮遊感もあって軽やかだった。
でも、一つひとつを見ていると心がざわざわとする。
ガラスケースの中にはレンガやドライフラワー、シュミーズのような衣類など、様々なものが収められている。作品によってはカケラが散らばり、廃墟のようにも感じられ、そこから戦争を連想した。そして、いくつかの水彩画には裸体の女性があられもない姿で描かれている。その様子は聖なる存在というよりもレイプされているような印象を受けた。
そうした印象を受けたのは、ガラスケースであることから閉じ込められているという閉鎖性や、「ガラスの天井」に表現されるような見えない境界線を感じたからかもなのかもしれない。
最初見た時は透明感と浮遊感を感じた軽やかな世界が、ひんやりと冷たく重くのしかかる世界へと見え方が変化していった。
ガラスケースの並ぶ様子は標本ケースが並んでいるようでもあり、私が観察していたのは暴力に満ちた世界なのだろうか。
アンゼルム・キーファー個展「Opus Magnum」は2024年7月13日まで。